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【企業トップ×就活生対談】さつまいもを世界へ発信し農業の新たな道を切り拓く-くしまアオイファーム-

「知っている企業以外の優良企業を探したい」「ナビ掲載の企業を見ていてもイマイチ魅力がわからない」と悩む就活生は多いと思います。この企画では私たち大学生が社長や人事部長へのインタビューを通して企業の魅力や想いを伝えることで、みなさんの「わからない」を「わかる」に変えます。

今回は大学生の松村が、株式会社くしまアオイファームの池田会長にお話を伺いました。

同社は宮崎県串間市に本社を構える農業法人で、高齢化の進む農業業界ですが、平均35歳のスタッフの方々がさつまいもの生産、加工、販売を手掛ける会社です。

目次

くしまアオイファームってどんな会社?

くしまアオイファーム株式会社の4P

くしまアオイファームさんについて、会社の魅力を4つのP(理念・職業・人事・組織)でまとめてみました。

実際にどんなことをやっているの?

くしまアオイファームでは、さつまいもの一大産地宮崎県串間市にて畑を耕し、5種類のブランドさつまいもを生産するところから加工・販売まで行っています。販売領域は日本だけでなく、海外にまで及んでいます。さつまいも輸出部門では36%以上の日本一のシェアを誇っています。

2017年には「輸出に取り組む優良事業者表彰」で農林水産大臣賞を受賞したほか、様々な賞を受賞しており、高い評価を得ています。

さつまいもを実際に作る生産部門もあれば、流通部門まで多岐にわたる業務があります。平均年齢約35歳の若いメンバーが一丸となってエネルギッシュに困難を超えていく、推進力のある会社です。

次の項目からは、くしまアオイファーム株式会社の池田会長とのインタビューの内容をお伝えします。

サツマイモ市場に参入した経緯や業界の様子についてお話をいただきました!

【インタビュー】農業世界での新たな試み

ーはじめまして。本日は貴重なお時間を頂き誠にありがとうございます。

これからインタビュー始めていきます。ぜひよろしくお願いします!

池田会長:はじめまして!こちらこそよろしくお願いします。

ーはじめに、さつまいもの輸出業で日本一のシェアお持ちですが、たどり着くまでにはどのような道のりがあったのでしょうか。

池田会長:さつまいもというのは、茨城県、千葉県など代表的な産地があります。

九州の青果用のさつまいもというのは、名古屋より以西で流通しているんです。流通経費の問題から九州のさつまいもは首都圏のスーパー、小売店などに提案したときにどうしても茨城県、千葉県のさつまいもに負けてしまいます。

ではどこだったら勝てるかなと考えたときに、当時さつまいもが少量しか輸出されていない事実に気づきました。

私が創業したときっていうのは第二次安倍政権ができた頃です。首相が「海外輸出を拡大する」というのを第一目標に農業部分で農業改革、農協改革、輸出拡大というのを最初から唱えていました。

まださつまいもの海外輸出も安定しておらず、生産者である私たちにとっても利益になっていない状況だったからこそ日本国内の流通とは違うニーズがあったわけです。

誰もやってないから勝てるのではないかと考えて、さつまいもの輸出を開始しました。

8年前「5年間で日本一になろう」と初期のメンバーで集まって決めました。とりあえず今輸出では日本一を達成しましたね。

【インタビュー】くしまアオイファームの様子ーみんなで作り上げた会社ですー

ー組織の特徴や雰囲気などを教えてください。

池田会長:創業当初は、大学のサークルみたいなノリでした。

「農業」が若い人たちにも注目され始めたころ、宮崎の田舎にこんな会社があるのかとメディアに取り上げられたりしました。そういうメディアなどを見て、集まったメンバーによる面白いことやろうというノリの会社です。

私は普通の農業従事者でしたから、経営のプロではありませんし、私よりさつまいもを生産する能力・技術が高い人は腐るほどいると思います。

だから農業界の若い人材を集めなければならないと思っていて、8年間ずっと先行投資気味に人を入れているというのが現状です。

私たちの中には二通りの社員がいます。まず学歴も良くて、前職もすごく有名な企業だったり、頭脳と技術が必要とされたりする会社にいた人です。

例えば、社長は外資系商社出身ですし、副社長はニューヨークから来ている日本人です。ほかにも大手進学塾の宮崎地区エリアマネージャーだった社員もいます。

もう1つは、今まであがいてきた人材です。やりたいことはいっぱいあるんだけど、田舎に仕事がなくてずっと派遣で働いていた人や、高校卒業後、引きこもって自宅でゲームだけしていた人も所属しています。そういうあがいてた人材が自分の役割や自分の仕事の楽しさを感じて、活躍しています。

実は私の会社では、次の社長を総選挙で選んでいます。

パートさんや海外実習生、正社員全員が投票します。もちろん個人の好き嫌いで人を判断しないようにです。そういうことを繰り返して、会社というのが成長してきました。幹部社員、パートさん、海外実習生みんなで作った会社です。

ー池田会長の夢はなんでしょうか。

池田会長:日本全体の農業者にアピールしたいと考えて会社をつくっています。

皆さんが思っている以上に農業では血税が投入されているんです。法人化して大規模農業やってる方もいらっしゃいますし、個人で農業されてる人もいらっしゃいます。

農業という産業自体が国民に必要とされいるのですから、地域や農業者は必要とされている分国に返す必要があります。私は、農業に携わる方、特に農業法人を経営されていらっしゃる方は、もっと公の器としての行動をすべきだと考えています。しかしその責任をまだ果たしてない会社というのが多いと感じています。

【インタビュー】さつまいも市場の今と今後の展望

ー現在のさつまいも市場についてお話しいただきたいです。

池田会長:日本国内のさつまいも市場というのは300億くらいだといわれています。加えて年々拡大してるんですよ。

今年度農林水産省が10年後の日本の野菜や穀物の需要予測というのを出しましたが、人口減少に伴い、今よりも穀物や野菜が総じて今よりも必要なくなるということがわかったんです。そんな中、野菜の中でさつまいもだけが今よりも6万トン多く必要であると予測されました。

農林水産省幹部の方に理由を聞いたところ、さつまいもの輸出拡大予測と国内のコンビニへの納品の多さが原因だとおっしゃられていました。スイーツなどすごく増えていますよね。それがブームではなくて、定着してきているとみてるというのが彼らの答えでした。

スーパーやコンビニで普通に焼き芋が年中おいてある状態というのも近年になって定着してきました。私の世代では、焼き芋を食べることというのはダサいことだったんですよ。そもそも焼き芋屋さんはほとんどありませんでした。今ではインスタにあげたり、逆におしゃれなものとして認識されていますよね。

現在300億円と言われている国内の青果用さつまいも市場。実は売り上げが50億円以上という会社は1社しかありません。茨城県のポテトかいつかさんという会社ですね。あとは農協さんの1組織があるくらいです。

ー今後の展望はどのようなものでしょうか。

池田会長:さつまいも市場は市場としてとてもニッチで、拡大している企業・法人は日本国内でもまだまだ少ないです。そうした状況を踏まえ、弊社の役割として現在種苗の開発を進めています。

今までのさつまいもの品種は99%国が作っていました。さつまいもは収穫したものが翌年の種になってしまうためいくら種苗会社が種苗を開発しても更新されません。だから利益がとれず誰もやりたがらなかったんです。

国が作ったものは日本国内どこで作ってもその品種ですから差別化できません。

そこで私たちは宮崎大学さんと共同研究講座を3年前に開設しました。国立大学と共同研究を行うのは日本の農業法人として国内初の試みで、現在までに5500万円投資しています。さつまいもにおける全研究を宮崎大学と弊社の社員、研究者で行い、現在まで約1500種類の新しい品種ができてるんですよ。

重イオンビーム照射法という技術により通常の交配育種の3倍早く開発しています。また、ただ種を売るだけでなく、売った種を100%弊社から出荷する条件をつけることで安定した利益を確保することができています。農家さんにとっても今までの品種よりも収穫量が高かったり、弊社が高く買い取るため、利益が上がっているんです。

日本国内においても海外においても全く同じことをやっていくということが弊社のさつまいもビジネスの未来です。実はもう九州全県に契約農家さんがいらっしゃいます。加えて日本の一大産地の1つである茨城県にも契約農家さんがいらっしゃいます。茨城県から首都圏、東北、北海道に出荷しているのです。

来年以降それを日本各地で行っていき、東北、北海道といった北の方を攻めていこうという戦略を立てています。いずれは日本各地に産地がある状態をつくることが望ましいと思ってます。自社では全てできないので、地元の農家さんや企業様と連携していくことになります。

日本国内で10年以内に100億円企業になること。日本のさつまいも、青果用のさつまいもの3分の1が弊社のシェアとなること。これが当社の10年計画です。

当社の前期売上は13億8千万円でした。今期が15億5千万円くらいになると思っていますが、これは生産法人でトップです。

33%のシェアを占めるというのは、価格決定権を持つこととほぼ同義です。品種が弊社のものしかなく、いろんな独自加工品を容易に展開できる状態になっていく。それを世界に展開していきたいです。

【インタビュー】学生に向けてのメッセージ

ー最後に学生に向けてメッセージをお願いいたします。

池田会長:私は、皆さんの年齢の頃、相当駄目な人間でした。努力しない、チャレンジしないにも関わらず、根拠の無い自信と薄っぺらい知識で自分をガードして、自分が不幸なのは世の中のシステムのせいにして生きていました。

年齢を重ねるたび、若い頃の自分の行動を悔い、反省の日々を送っていました。 40歳になった時、その時間を取り戻す為に、個人創業しました。そして、今の会社があります。 

私は農業をしています。会社を経営しています。 農業が得意だった訳でも無く、自ら進んで選んだ職業でもありません。 法人経営者になる事は、経営者、社長になりたくて自分で選択しました。 

皆さんは、まだ、自分のやりたい事が見つけられなかったり、複数あって迷ってらっしゃったり、そうした方々もたくさんおられると思います。 働くという事で、人生の先輩として一つだけ言える事は、

「自分の仕事内容を両親や未来の自分の子供に嘘偽り無く話す事が出来るか」 

そこが、一番大切な事だと思います。 

それが、好きな事だったり、得意な分野だったり、報酬が高かったり、楽そうだったり、仕事を選択する理由は人それぞれだと思います。 

まずは、人生楽しんでください。 皆さんの自由な発想で世の中を楽しく変えてください。

これからの皆さんに期待しております。 

業界を知ろうー農業界とは?ー

業界の構造と仕事内容

私たちの暮らしを支える第一次産業の一角である農業。イメージとして家族経営で畑を耕している風景を思い浮かべる人が多いのではないでしょうか。農業界の企業や業界について説明していきます。

農業界の企業は、農産物生産事業を扱う企業とアグリビジネスを行う企業の2種類が存在します。

農産物生産事業を扱う企業は「農業生産法人」もしくは「農地所有適格法人」と呼ばれています。このうち農業生産法人にも、「耕種農業生産法人」と「畜産農業生産法人」の分類があり、生産農産物の種類でさらに細かく分類されていきます。

次にアグリビジネスを行う企業についてです。アグリビジネスとは農作物の生産から流通の流れをサポートするビジネスのことです。生産のサポートサービスとして、種苗メーカー、農機メーカー、種畜メーカー、飼料メーカー、農業ITシステムメーカーが、流通をサポートするサービスとして商社、農産品物流企業、JAグループなどの事業会社が存在します。

例えば「さつまいも」という1つの農作物を取ってみても、芋の種類や育て方、「生鮮か加工か」「国内か海外か」といった流通市場など数えきれないほどの工程や分類があり、それぞれに合ったサービスを提供しているのです。

業界の市場と動向

農林水産省のデータによると、2019年の農業総産出額は8兆8,938億円で、減少傾向にあるとされています。しかし米や肉用牛などの種類によっては、生産額が増加傾向にあるものもあります。一方で、野菜やいも類、鶏卵においては生産量増加による供給過剰の影響で、価格低下を招いています。

2009年「農地改正法」が施行され、民間企業の農業ビジネス参入が可能となった「農業改革」から10年以上経ち、参入企業は今も増加しています。そのため、農業に携わる雇用も少しずつ増えており、若手就農者数も増加しています。

しかし依然として、農業界では、「高齢化」「後継者不足」が大きな問題となっています。農業従業者の平均年齢は年々高くなっており、就職者は減り続けているのです。その結果、廃業を選択する農家も増えていってしまっている現状があり、農業界の拡大を背に新たな解決への道が模索されています。

市場面からとらえてみると、国内では今後さらなる高齢化や人口減少が予測されているため、需要縮小が見込まれています。

一方、新興国における経済成長・人口増加によって、海外市場は食糧需給の増加が予想されています。そのため業界内でもいち早く海外に目を向けた農業関連企業は次々に海外へと手を広げています。日本の農産物の安全性と品質の高さが高く評価されている一方、今後農業のグローバル化が一層進んでいくと、競争が激化していくとされています。

【参考サイト】
第一次産業ネット 農業・アグリビジネス業界の業界研究
業界動向SEARCH.COM 農業業界
CheerCareer 日本の食生活を支える「農業業界」!就活生にお勧め企業もご紹介!

最後にー株式会社のインタビューを通してー

池田会長からお聞きする農業世界は驚きの連続でした。厳しい業界の中で自身の信念を貫く会長の人生から新しい時代を開いていく志と勇気を垣間見ることができました。

農業は私たちの生活においてなくてはならないものです。しかし農業に対して負の印象を持つ人がいることも事実です。

今回お聞きした、くしまアオイファームが活躍されているさつまいも業界から、農業にはまだまだ可能性を秘めた業界であることがよくわかりました。

この記事を読んだ皆さんも選択肢の一つとして農業の道を考えてみてはいかがでしょうか。

改めて、池田会長貴重なお時間をありがとうございました!

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