面接で「なぜゼネコンではなく建設コンサルタントを志望したの?」と聞かれて、きちんと違いを説明しながら志望動機を話せますか?
建設コンサルタントは主にインフラ整備に関係する設計や調査などを行っています。しかし、上記のような案件を実際に施工するのはゼネコンやその下請け企業です。
「建設コンサルタントとゼネコンとの違いを知りたい!」「建設コンサルタントを志望する際の志望動機の書き方を知りたい!」という方はぜひ本記事を参考にしてみてください。
また建設コンサルタントとゼネコンとの違い以外にも、建設コンサルタント業界の業務内容や職種、動向のほか、売上・利益・年収・従業員数・勤続年数をランキングで紹介しています。
建設コンサルタント業界のビジネス規模や働きやすさ等がわかるので、ぜひ確認してみてください。
建設コンサルタントとは
建設コンサルタントは、道路・トンネル・ダムといった世の中のインフラ整備に関わる仕事をしています。
具体的には、市・区役所や国土交通省といった発注者からの依頼に対して事前調査のもと最適な建設プランを提案するコンサルサービスを提供しています。
このようにインフラ整備に関わる建設コンサルタントが扱う案件には「公共事業」が多く含まれているのです。
そのため、公平性や透明性を保証する必要があり、建設コンサルタントは「設計・施工分離の原則」という決まりに従って業務を行っています。
「設計・施工分離の原則」とは、設計をする企業と工事の施工を行う企業がそれぞれ異なる企業で行われるという方式のことです。
この原則のもと、建設コンサルタントは事前調査、設計、企画立案、施工管理などを通じて道路や橋、ダム、堤防、上下水道といった社会資本の整備を行っています。
以下では建設コンサルタントとよく比較対象に出される”ゼネコン”との違いについて詳しく説明していきます。
建設コンサルタントとゼネコンの違い
下記の図解は建設コンサルタントとゼネコンの業務の流れを表したものになります。
上記の図解の通り、建設コンサルタントは施工以外の大部分を担うのに対して、ゼネコンなどは主に施工を中心とした役割を担っていることが分かります。
つまり、「設計・施工分離の原則」において「設計」を担っているのが建設コンサルタント、「施工」を担っているのがゼネコンというわけです。
それぞれの領域で代表的な企業は以下になります。
建設コンサルタントでは日本工営や建設技術研究所、オリエンタルコンサルタンツなどであり、ゼネコンでは鹿島建設や清水建設、大成建設などが挙げられます。
ゼネコンに関しては下記の記事でも詳細に説明しているので参考にしてみてください。
関連記事:【業界研究】建設業界の動向6選!仕事内容や志望動機・自己PRのポイントも紹介
建設コンサルタントの職種
建設コンサルタントは主に技術職とコンサルタント職(営業職)に分けることができます。
企業によって業務範囲や業務内容が異なるため、応募する前にきちんと確認しておきましょう。
技術職
技術職は企画や調査、設計など専門的な知識を必要とする分野全般を担っています。道路や地盤、ダム、上下水道など技術職が関わる領域は幅広くあります。
技術職は企業や業務によって資格が必要となる場合があり、建設コンサルティングの根幹を担う重要な仕事です。
ただし、企業によって技術職の業務範囲が細分化されていたり特定の領域のみ募集していたりするなど企業によって大きく異なることがあるのできちんとHPから確認しておきましょう。
コンサルタント職(営業職)
コンサルタント職(営業職)は国や自治体などが抱えるインフラ問題を解決し、インフラサービスを充実させる仕事です。
どのような課題があるのかを明確にし、工事全体の計画を立てたり外注業者との連携を図ったりすることもあります。
また、工事の施工が終わった後の維持管理にも携わるため1つのプロジェクトが長期間に及ぶことも多々あります。
建設コンサルタント業界の動向
ここでは建設コンサルタント業界の動向を紹介していきます。それぞれ以下のトピックスについて紹介しているので、確認しておきましょう。
■建物の老朽化・自然災害による増収
■人材不足による労働環境の改善
■新技術の導入
■M&Aによる経営拡大
■海外進出の必要性
まず動向を学ぶ前に建設コンサルタント業界について数字で見てみましょう。
参照元:業界動向サーチ(2021-2022)/※2023年7月作成時点業界規模は比較的大きいわけではないですが、近年の建設コンサルタント業界におけるトレンドもあってか伸び率と利益率はプラスになっています。
次に建設コンサルタント業界の6つの動向について紹介していきます。
国内外における契約件数・契約金額の推移
契約件数と契約金額を見ることで建設コンサルタント業界の市場動向について知ることができます。
まず、国内の契約件数・契約金額の推移について紹介していきます。
参照元:建設関連業等の動態統計調査/建設コンサルタントより就職エージェントneoが独自に作成契約件数は、平成23年に発生した東日本大震災後の需要や令和3年のオリンピック開催に伴う施設の修繕、新設の需要などから変動が起きています。
しかし契約件数とは異なり、契約金額は上昇傾向にあるため単価が上がっていることがグラフから読み取れます。
次は国外における契約件数と契約金額についての紹介です。
参照元:建設関連業等の動態統計調査/建設コンサルタントより就職エージェントneoが独自に作成海外における契約件数は比較的緩やかな減少傾向にあります。
特に世界中でコロナウイルスの感染拡大があり渡航制限などがあったためか、ここ数年は減少傾向です。
また、契約金額に関しても変動があるものの全体的に見れば減少傾向にあります。
建物の老朽化・自然災害による増収
近年、建設コンサルタント業界は増収・増益を記録しています。
その理由として挙げられるのが建築物の老朽化や自然災害によるインフラの再整備などです。
高度成長期に建てられたものの多くが時間の経過によって老朽化しており、新たに整備し直す必要が出てきました。
ただ整備するだけではなく、気候の変化に対応したり、新しい技術を取り入れて改善したりすることでより長く効率的なものに変えています。
また、自然災害に関しては、大雨による洪水や土砂崩れ、地震による地盤沈下や津波などの災害によって壊れた社会資本を新しく作り直したり、現存のものを災害に耐えられるものに作り変えたりしています。
人材不足による労働環境の改善
近年建設コンサルタント業界では離職者が増加し、全体的に高齢化が進んでいるのが特徴です。
そのため、労働環境を改善することで離職者を減らす取り組みが重要になっています。
例えば建設コンサルタンツ協会が「働き方改革推進特別本部」を設け、発注者と連携して完全週休2日や深夜残業ゼロへの実現といった就業環境の改善に取り組んでいます。
新技術の導入
近年あらゆる分野で積極的にDX化が行われており、建設コンサルタント業界でも導入されています。
地図などの基盤情報がデジタル化され、2次元の図面は3次元のBIM/CIM(※)に発達するなど様々な情報がデジタルデータとして利用されています。
設計などのデータが3次元のデータになることでプロジェクトの関係者間での情報共有が容易になり、効率的に業務を進められるようになることが期待されているのです。
またビッグデータを活用したり、ロボットやAIなどの技術を用いて生産性の向上を図っています。
この他、Web会議システムを用いることで移動時間の削減やペーパーレスに貢献し、より効率的に業務を行えるような技術も導入されてます。
(※)BIM/CIMとは、計画、調査、設計段階から3 次元モデルを導入することにより、その後の施工、維持管理の各段階においても3 次元モデルを連携・発展させて事業全体にわたる関係者間の情報共有を容易にし、一連の建設生産・管理システムの効率化・高度化を図る取り組みです。 国土交通省近畿地方整備局
M&Aによる経営拡大
現在、建設コンサルタント業界は主に社会資本のインフラ整備で事業が成り立っていますが、今後こうしたインフラ事業が民営化されたり、大幅な縮小・削減がされたりする可能性もゼロではありません。
上記以外にも様々な理由で案件の受注ができなくなったとき、展開している事業がインフラ整備のみだと企業は存続できません。
そのため、最近では成長戦略の一環としてM&Aを掲げ、新規事業分野への参入や経営基盤の強化などを図っている企業が出てきています。
例えば建設技術研究所では、様々な分野で活躍する企業を新しくグループに迎え入れることで事業領域を拡大して「マルチインフラ企業」を目指す方針を掲げています。具体的には、道路に自動運転に対応したセンサーを付けることで多機能な道路の実現を目指しています。
海外進出の必要性
少子高齢化などの問題から将来的な国内市場の縮小などを見越して海外に進出する動きもありました。
特に発展途上国のインフラ整備などは大きな市場であるため力を入れて進出していました。
しかし、日本経済の停滞やコロナウイルスの影響によって今後も積極的に海外進出できるかの雲行きが怪しくなっていると言われています。
今後は民間とも協力して海外進出をしたり、他国との価格競争に勝てるような技術開発がなされたりする必要があると考えられています。
建設コンサルタント業界の志望動機の書き方
建設コンサルタント業界の志望動機を書く際は「なぜ建設コンサルタント業界なのか」「なぜその会社なのか」をしっかりと深堀りしておくことが必要です。
具体的には自分が将来何を成し遂げたいのかを明確にする必要があります。例えば「利用者の要望に寄り添った建物を提供したい」「今よりも便利な設備を開発したい」などといった建設コンサルタント業界ならではの理由を述べるようにしましょう。
“なぜその会社なのか”については、他の企業ではなくその企業でなければいけない理由を伝えます。
例えば「建設コンサルティングサービスの中でも特に電力設備に力を入れているため、大学生活で培った研究室での経験を活かしたい」などといった内容です。
企業研究をし、どのような人材が求められているのかをきちんと把握してから作成すると的確な志望動機を書くことができます。
建設コンサルタント業界でうける自己PRの書き方
自己PRの書き方について学ぶ前に、まずは建設コンサルタント業界の求める人物像を把握しておきましょう。
企業に評価される自己PRをするためには、その業界ではどのような人が求められているのか知っておくことが重要です。
建設コンサルタント業界の求める人物像
建設コンサルタント業界ではコミュニケーション能力、主体性、責任感といった能力は最低限必要であると考えられます。
建設コンサルタント業界は自社だけではなく発注者やゼネコンなどとも連携を取る必要があるためコミュニケーション能力は必須です。このコミュニケーション能力にはただ話したりするだけではなく、相手がどのようなニーズや問題点を抱えているのかを引き出したり、お互いの条件をすり合わせる交渉をしたりする能力も含まれています。
また主体性に関しては、受動的に指示を待っているのではなく自ら考えて行動することを指しています。目標や目的をもち、それに向かって努力できるかどうかが大事になってきます。
そして、建設コンサルタントは工事を施工して完成した後の利用者のことを考えて設計を行わなければなりません。個人の住宅などを建てるのとは異なり、不特定多数の人が日常的に使うことを見通して設計しなければならないという責任感をもって業務に当たる必要があります。
自己PRの基本的な書き方
自己PRを書く際は、以下のように「強み⇨エピソード⇨結果・学んだこと⇨入社後どう活躍できるか」の順番で書きます。
(1)結論
自己PRを書く際は最初に「私は○○することができます」といったように自分の長所を端的に述べます。
最初に結論を述べ面接官に今から何の話をするのか伝えることで、聞き手側も話が入りやすくなります。
そのため、自己PRをする際は結論として、まず長所を伝えるようにしましょう。
(2)エピソード
長所を伝えたら、実際にその長所があることを証明できるエピソードを交えます。
ここではできるだけ具体的なエピソードを伝えるために、その出来事の中で生じた課題・目標や、その課題・目標に対してどのような行動をとったのかについてまで書くようにしましょう。
また企業は、課題・目標やそれ対する行動を通してその人の人柄や価値観を判断しているため、なぜその課題・目標に取り組もうと思ったのか、なぜそのような行動をとったのかについて、しっかりと見つめ直しておいてください。
(3)結果・学んだこと
エピソードの次は、自分がとった行動によってどのような結果になったかについても書きましょう。
結果を書く際は、定量的に表すことを意識してください。
例えば「〇〇というアイディアを出し実践したところ、売上を40%上げることができた」など数字を用いてアピールした方が相手に伝わりやすいです。
また、この経験を通して何を学んだのかについても書きます。
面接官はその人の学びからも価値観や人柄を判断しています。価値観や人柄はその学生を採用するかどうかの大きなポイントとなるため、自分がどういった人なのか、いかにその企業に必要な人材であるのかをアピールするようにしましょう。
(4)入社後どう活躍できるか
企業は採用活動を通して、自社に貢献してくれる人材を求めています。つまり、面接官にこの学生は「自社で活躍する素養がある」と思わせるのが大事です。
そこで自己PRをする際は、最後に今伝えてきた長所をどのように志望企業の業務に活かしていくかまで伝えるようにしてください。
そのためには企業が求めている人物像を把握する必要があります。業界研究・企業研究を通してどのような強みをアピールするのか考えておきましょう。
より詳しい自己PRの書き方について知りたいという方は以下の記事を参考にしてください。
▶関連記事:企業から評価される自己PRの書き方とは?ポイントや注意点をわかりやすく解説
建設コンサルタント業界ランキング
ここでは建設コンサルタント業界のランキングを「業績」と「社内環境」に分けて紹介します。
建設コンサルタント業界の業績ランキング
以下の表は建設コンサルタント業界の業績ランキングを紹介しています。
参照元:業界動向サーチ/建設コンサルタント業界の売上高ランキング(2021-2022年)は上記企業の有価証券報告書に基づき作成しています。ランキングは上記企業のデータの合計または平均を表したものです。また企業名にあるホールディングスを「HD」と省略しています。※2023年7月19日時点売上については1位が日本工営、2位が建設技術研究所、3位がオリエンタルコンサルタンツHD、経常利益は1位が日本工営、2位が建設技術研究所、3位が応用地質です。
売上および経常利益において日本工営、建設技術研究所が上位に位置しています。
この2つの企業が上位に位置しているのは、公共事業で大きなシェアを得ているためと考えられます。
売上や利益、利益率をチェックした方が良い理由は、以下の2点です。
■利益、利益率は企業が行っているビジネスの成否を示しているから
売上は企業の財務力、ビジネスの規模を表しています。つまり売上が高い企業の方が行っているビジネスの規模が大きいということです。
またA社とB社が同じ利益の場合、売上が大きい企業の方が金融機関からの融資を受けやすいとされているため、売上を見ることで企業の資金調達力もチェックすることができます。
次に利益、利益率は企業が行っているビジネスの成否を示しています。そのビジネスによる付加価値がどれくらいあるかを測る指標です。
つまり利益がほとんど出ていなかったり、赤字だとビジネスに何らかの問題があるということになります。
ただし、このランキングだけでなく、成長率も大事であるため各企業の過去についても振り返っていきましょう。
建設コンサルタント業界の社内環境ランキング
以下では建設コンサルタント業界の社内環境に関するランキングを掲載しています。
参照元:業界動向サーチ/建設コンサルタント業界の平均年収ランキング(2021-2022年)は上記企業の有価証券報告書に基づき作成しています。ランキングは上記企業のデータの合計または平均を表したものです。※2023年7月19日時点年収は1位が建設技術研究所、2位が構造計画研究所、3位がE・Jホールディングス、勤続年数は1位がFCホールディングス、2位がいであ、3位がNJSとなります。
勤続年数が長いということは定着率が高いということになります。一概には言えませんが、定着率が高い会社は良い会社である可能性が高いです。
また従業員数が多い会社は多様な人と関わり合うことができるというメリットがあります。しかし多いと自分の意見が通りにくい場合もあるというデメリットもあるため、自分にとってどの環境が合っているのか考えてみましょう。
まとめ
今回は建設コンサルタント業界について説明してきました。
建設コンサルタント業界は「設計・施工分離の原則」に従って業務が行われ、コンサルティングを行う建設コンサルティング企業と主に施工管理を行うゼネコン企業に分かれています。
また、建設コンサルタント業界ではM&Aや海外進出などの動きも見られますので、以上のような建設コンサルタント業界の概要や動向をきちんと把握してから選考に進みましょう。
さらに詳しく業界研究を行う場合の”やり方”は下記記事を参考にしてください!
▶関連記事:たった4ステップで業界研究を完璧に!誰でも簡単にできるやり方を紹介
●”建設コンサルタント業界”の動向
動向(1):国内外における契約件数・契約金額の推移
動向(2)建物の老朽化・自然災害による増収
動向(3)人材不足による労働環境の改善
動向(4)新技術の導入
動向(5)M&Aによる経営拡大
動向(6)海外進出の必要性
●”建設コンサルタント業界”の求める人物像
・コミュニケーション能力
・主体性のある人
・責任感のある人
“建設コンサルタント業界”に関するその他の記事
ここでは、建設コンサルタント業界に関連する記事をご紹介します。
ES作成をしたり、面接に望んだりする際には、その業界や企業でなければならない理由を明確化しておくことが重要です。
「建設コンサルタント業界に興味はあるけれど、具体的な業界はまだ定まっていない」「この業界でしかできないことって何だろう」と悩んでいる人は、是非参考にしてください。
⇒【業界研究】建設業界の動向6選!仕事内容や志望動機・自己PRのポイントも紹介
⇒【業界研究】住宅設備業界の動向5選!仕事内容や志望動機・自己PRのポイントも紹介
⇒【業界研究】住宅業界の動向3選!仕事内容や志望動機・自己PRのポイントも紹介
⇒【業界研究】不動産業界の動向7選!仕事内容や志望動機・自己PRのポイントも紹介
その他にも、本サイトでは志望動機・自己PRの書き方、業界研究のやり方に関するコンテンツなども多数公開しています。
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