スマホや家の明かり等、私たちの生活を陰ながら支えてくれている多くの生活必需品は、電力を動力源としています。
ほとんどの就活生は、停電等の経験から電力がいかに大切か実感したことがあるのではないでしょうか。
そんな電力を供給する電力業界は、私たちの生活になくてはならない縁の下の力持ちといえます。
近年、東日本大震災以降の原子力発電所の再稼働問題や、脱炭素社会に向けたクリーンエネルギーの開発など、電力業界は度々ニュースで取り上げられており、今後の動向について気になる方が多いのではないでしょうか?
本記事では、「電力業界って具体的に何をしているの?」「就職難易度は?」という方に向け、電力業界の動向や仕組みに加えて、志望動機や自己PRの書き方についてもわかりやすく解説していきます。
そして、本記事の最後には電力業界の売上や利益、年収、従業員数、勤続年数をランキングで紹介しています。
ビジネス規模や働きやすさがわかるので、確認してみましょう。
電力業界とは
電力業界とは、発電施設で発電し、工場や一般家庭など、電気を必要とする需要家に電気を供給することで利益を得る業界のことです。
家電からテーマパークまで、電力は現代社会に必要不可欠であり、需要がなくなることはありません。
電力という必要不可欠な商材を扱う「責任感」また需要がなくならない「安心感」から、電力業界は就活生からは手堅い人気を得ています。
そんな電力業界について、仕組みから理解していきましょう。
電力業界の仕組み
電力業界のビジネスは「発電」「配送電」「小売電気」の3つで構成されています。「発電」事業者が発電した電気を、「配送電」事業者が運び、「小売電気」事業者が私たち需要家に販売します。

発電事業
発電事業とは言葉の通り電気を作る事業です。具体的には、石油やガス等の燃料を主に国外から調達し、発電設備を使って電気を作ります。
火力、水力、原子力発電のみならず、太陽光、風力等の再生可能エネルギーによる発電を行っている事業者もこれに該当します。
配送電事業
配送電事業とは、発電事業者から受けた電気を小売電気事業者に供給する事業です。
電力を送るだけでなく、電力を送るために使う電線や変電所等の設備管理もこの事業に含まれています。
小売電気事業
小売電気事業とは、需要家に電気を供給する事業です。私たちはこの小売電気事業者から電気を購入しています。
電力業界の職種
電力業界は国内外問わず様々なところに職場があります。業界の組織全体を理解するために、興味ある職種以外も確認しておきましょう。
営業
営業とは、自社の利益を上げるために法人や一般家庭に出向き、電力プランを売り込む職種です。
どのようなクライアントに出向きどのようなアプローチで営業をかけるのかなど、売り込みをするだけでなく、売るためのリサーチや企画作成も営業が行います。
調達
調達とは、主に国外からの燃料の輸入業務を行う職種です。
化石燃料に乏しい日本において、石炭や石油などの発電燃料は輸入に頼らざるを得ません。
安定した電力供給を確保するため、世界各国にある現地企業と交渉を行なっています。
取り扱う金額も大きく、電力会社の運営状況やライフライン維持に大きくかかわる重要な職種といえます。
保守管理
保守管理とは、発電所や配電設備が安全に動いているかどうかの点検業務を行う職種です。
今後も安全に動き続けるための計画を立てたり、設備の修理、交換を担当したりします。
災害等で送電が停止した場合、真っ先に復旧工事を行うなど、業務に大きな責任を持ちます。

【2023年最新】電力業界の動向
ここでは電力業界の動向を3点紹介していきます。それぞれ以下のトピックスについて紹介しているので、確認しておきましょう。
■発電電力量の推移からみる電力業界
・新型コロナウイルスによる電力需要の変化
■電力料金の変動
・電力小売り全面自由化
・発送電分離
■環境意識の高まり
・原子力発電問題
・脱炭素社会に向けた動き
まず動向を学ぶ前に電力業界について数字で見てみましょう。業界規模、利益率横ばいで安定していますが、成長率は減少しているようです。

電気発電量からみる電力業界
以下は、2011年度から2020年度までの電気事業者の発電電力量の推移を表したものです。

上記のグラフから発電電力量は10年にわたり大きく変化していないことがわかります。
このグラフで最近の動向として注目すべき点は、2020年の新型コロナウイルス感染拡大による影響です。
一見変動がないように見えますが、電力業界を志望するにあたって重要な動向が隠れているため、以下で詳しく説明します。
新型コロナウイルスによる電力需要の変化
新型コロナウイルスは私たちの生活の形を大きく変え、2020年3月頃から全国的に経済が低迷しました。
皆さんも飲食店や企業の営業停止のニュースなどから実感したと思います。
電力業界もその影響を受けた業界の1つです。
ただ、ほかの業界に比べ特徴的なのは、電力業界は新型コロナウイルスによって需要の「増加」と「減少」両方の影響を同時に受けた点です。
具体的には、家庭部門の電力需要が増加し、産業部門、業務部門の電力需要が減少しました。
家庭部門とは、家計が住宅内で消費される電力量を表す部門のことです。コロナ禍ではテレワークや自宅にいる時間の増加から、家庭部門の電力需要が増加しました。
次に電力需要が減少した部門として、産業部門と業務部門があります。産業部門とは工場や事業所内で消費される電力量を表す部門のことです。
また業務部門とは飲食店やホテル等のサービス内で消費される電力量を表す部門のことです。
つまり、コロナ禍で工場や飲食店が営業を停止し、その分おうち時間での私たちの電力使用量が増えたため、電力需要の「増加」と「減少」が相殺されたことになります。
2022年現在、経済活動は徐々に回復していますが、感染再拡大の可能性もあり、電力需要の変化は不透明です。
電力料金の変動
これまでの電気事業は、大手電力会社が電気を「つくる(発電)」「送る(送電)」「売る(小売)」という3つの役割を1社で担っており、独占状態にありました。
この独占体制を変え、競争を促すことによって世界的に高いといわれている電気料金を引き下げようという「電力システム改革」が2000年から始まりました。
その中でも重要なトピックを2つ紹介します。
電力小売全面自由化
電力小売全面自由化とは、電気の購入先を多様な事業者から自由に選べるようになる動きです。電気を「売る」新規参入者を募って競争原理を導入し、電気代を安くすることを目的としています。
これまでの電気は電力会社が独占的に販売していましたが、家庭、飲食店等が利用したい電力会社を選べるようになったことで、電力会社同士の価格競争が生まれました。
その結果、新たに参画してきた企業による、セット料金等の割引サービスが登場するなど、電力料金が安くなっていきました。
発送電分離
発送電分離とは、電力の発電と送電を別々の事業者が行うように発電と送電のネットワークを分離し、新規参入者を含めすべての電力事業者が平等に利用できるようにする動きです。電気を「送る」送配電事業者の中立性の確立を目的としています。
送電設備を平等に利用できるようになることで新規参入者が現れました。結果として、電力小売自由化と同じように会社間の価格競争が促され、安い電気料金で利用できることになります。
また、いままで発送電を一括管理していた会社としても、送配電の維持管理費を削減することができます。この削減分も、電気料金が安くなることに寄与しているかもしれません。
環境意識の高まり
近年では、東日本大震災やパリ協定の影響により日本だけでなく、世界的に環境意識が高まっています。今回は、中でも電力に関連する重要な2つのトピックを紹介していきます。
原子力発電問題
原子力発電問題とは、稼働停止していた原子力発電所を再稼働させるかどうかの問題のことです。
東日本大震災での福島原子力発電所の事故によって、原子力発電所の放射性物質漏洩の危険性などの問題点が浮き彫りになりました。稼働率が大きく減少し、現在でも稼働率は24.4%にとどまっています。
一方で、近年の環境意識の高まりによって、原子力発電所を再稼働させるかどうかの議論が活発化しています。
原子力発電は、発電する際に二酸化炭素を排出しません。さらに、発電コストは火力発電や再生可能エネルギーを使った発電方法に比べ低い水準です。
日本は主に火力発電によって電力供給をしていますが、原子力発電の安全性が証明された場合、電力供給源が大きく変わる可能性もあるため、今後も注目する必要があるでしょう。
脱炭素社会に向けた動き
脱炭素社会とは、地球温暖化の原因となる代表的な温室効果ガスである二酸化炭素の排出量がゼロになった社会のことを指します。この状態を「カーボンニュートラル」とも呼びます。
脱炭素社会に向けた動きは、気候変動に関する政府間パネル(IPCC)による報告書がきっかけです。この報告書から、2050年までに脱炭素社会の実現という国際的な合意が生まれました。
電力業界に関しては、二酸化炭素排出量の多い火力発電から、再生可能エネルギーを使った発電への転換を進めています。この脱炭素の動きにうまく乗れるかどうかが電力業界の企業が長く生き残るかぎとなるでしょう。
電力業界の就職難易度
ここでは、電力業界に就職するにあたっての資格・経験の必要性や難易度について紹介します。
難易度を把握することができれば、今やらなければならないことが見つかり、具体的な対策案を立てられるようになるため、ぜひ参考にしてみてください。
ランキングからみる難易度
駿台予備学校と大学通信の調査を合わせ算出した「2022入社が難しい有名企業」ランキング200社のうち、電力業界の企業は以下の4社がランクインしてます。

この難易度は、「大学の平均難易度 × その大学からの就職者数」を企業ごとに合計し、その企業の就職者数の合計で割り出したものになります。
200社の中で後半の順位にある企業ばかりですが、「順位が下だから簡単に就職できる」というわけではありません。
2020年時点で、日本には275万を超える法人企業があります。つまり、このランキングに入っている時点で全体の上位0.1%以内に入っていることになります。
ランクインしているだけでも非常に難易度が高いと考えるべきでしょう。
そして、数多くの電力会社がランクインしている事実から電力業界の難易度は比較的高いといえます。
電力業界に必要な資格
電力業界のほとんどの企業では入社するために必須の資格を設けてはいません。
基本的に実務に必要な資格は、入社後に取得することになります。ただ、資格を持っていれば大きなアピール材料になります。
ここでは、部門・職種にかかわらず取得することでアピール材料になる資格を2つ紹介します。
■電気主任技術者(電検)
電気主任技術者とは、電気設備の保安管理をするために必要な資格です。3種、2種、1種があり、数が小さいほど難易度が高いです。
また電気主任技術者3種は電力会社で最もメジャーな資格であるため、まずは3種を目標にするのがよいでしょう。
■TOEIC
TOEICとはビジネス英語力を測る資格のことで、国内の英語資格の中で最もメジャーです。
電力業界では、主に国外から発電燃料を調達する必要があり、海外取引をする中で英語でのコミュニケーションは必須といえます。
今後事業拡大するにあたり高いTOEICのスコアは大きなアピールポイントになります。
電力業界の求める人物像
人々の生活に欠かせない電力を扱っている電力業界は、非常に重要な役割を担っています。
設備に不具合が生じ、電力供給が停止した場合の影響範囲は非常に大きいです。よって、責任感を持って仕事に取り組むことが求められています。
どのような仕事でも責任をもって丁寧にやり遂げることは求められますが、電力業界の場合は特にその傾向が強いことは理解しておきましょう。
また、社内外問わずコミュニケーションをしっかりと取れていないとミスに繋がってしまいます。
安定的な電力供給をするためにもコミュニケーション能力は必須です。
電力業界は大きな転換期に入ろうとしています。
新規参入による競争の激化、発電燃料の転換が課題となっているなか、新しいビジネスを考え、行動するチャレンジ精神を持った人材は電力会社にとって求められる人材と言えるでしょう。
電力業界で評価される自己PRの書き方
自己PRを書く際は、以下のように「強み⇨エピソード⇨結果・学んだこと⇨入社後どう活躍できるか」の順番で書きます。

(1)結論
自己PRを書く際は最初に「私は○○することができます」といったように自分の長所を端的に述べます。
その際は、電力業界の求める人物像に合わせ「責任感」や「チャレンジ精神」といった長所を選ぶようにしましょう。
このように最初に結論を述べ面接官に今から何の話をするのか伝えることで、聞き手側も話が入りやすくなります。
そのため、自己PRをする際は結論として、まず長所を伝えるようにしましょう。
以下で「チャレンジ精神」という長所を選んだ場合の例を紹介します。
(2)エピソード
長所を伝えたら、実際にその長所があることを証明できるエピソードを交えます。
理由としては、企業は、課題・目標やそれに対する行動を通してその人の人柄や価値観を判断しているためです。
(3)結果・学んだこと
エピソードの次は、自分がとった行動によってどのような結果になったか、この経験を通して何を学んだのかについても書きます。
また、結果を書く際は定量的に伝えることでよりイメージしやすい自己PRを作成することができるため「〇〇というアイディアを出し実践したところ、売上を40%上げることができた」など、数字を用いてアピールしてみましょう。
(4)入社後どう活躍できるか
企業は採用活動を通して、自社に貢献してくれる人材を求めています。
つまり、面接官にこの学生は「自社で活躍する素養がある」と思わせることが大事です。
そのためには繰り返しになりますが、企業が求める人物像を把握しておく必要があります。
業界研究・企業研究を通してどのような強みをアピールするのか考えておきましょう。
電力業界の志望動機の書き方
電力業界の志望動機を書く際は「なぜ電力業界なのか」「なぜその会社なのか」をしっかりと深堀しておくことが必要です。
具体的には自分が将来何を成し遂げたいのか、例えば「生活に必要不可欠な電力を安定的に供給し、人々の生活を支えたい」などといった電力業界ならではの理由を述べるようにしましょう。
“なぜその会社なのか”については、他の企業ではなくその企業でなければいけない理由を伝えます。
例えば関西電力であれば、海外事業に力を入れており、発展途上国に対し大規模な発電事業やコンサルティング業務を行っています。
このように企業によって特徴は異なるため、しっかりと企業研究を行い、企業ごとの特徴や強みを把握した上で、志望企業を決めるようにしましょう。
電力業界ランキング
ここでは電力業界のランキングを「業績」と「社内環境」に分けて紹介します。
電力業界の業績ランキング

売上については1位が東京電力HD、2位が関西電力、3位が中部電力、経常利益は1位が関西電力、2位がJ-POWER、3位が東京電力HDです。
海外展開や新規顧客を獲得するための取り組み等を積極的に行っている企業の売上が比較的上位にきています。
売上や利益、利益率をチェックした方が良い理由は、以下の2点です。
・利益、利益率は企業が行っているビジネスの成否を示しているから
売上は企業の財務力、ビジネスの規模を表しています。つまり売上が高い企業の方が行っているビジネスの規模が大きいということです。
またA社とB社が同じ利益の場合、売上が大きい企業の方が金融機関からの融資を受けやすいとされているため、売上を見ることで企業の資金調達力もチェックすることができます。
次に利益、利益率は企業が行っているビジネスの成否を示しています。そのビジネスによる付加価値がどれくらいあるかを測る指標です。
つまり利益がほとんど出ていなかったり、赤字だとビジネスに何らかの問題があるということになります。
ただし、このランキングだけでなく、成長率も大事であるため各企業の過去についても振り返っていきましょう。
電力業界の社内環境ランキング

年収は1位がイーレックス、2位が中部電力、3位が関西電力、勤続年数は1位が東京電力HD、2位が北陸電力、3位が九州電力となります。
勤続年数が長いということは定着率が高いということになります。一概には言えませんが、定着率が高い会社は良い会社である可能性が高いです。
また従業員数が多い会社は多様な人と関わり合うことができるというメリットがあります。
しかし多いと自分の意見が通りにくい場合もあるというデメリットもあるため、自分にとってどの環境が合っているのか考えてみましょう。
まとめ
本記事では電力業界について紹介してきました。
小売の完全自由化やエネルギー転換によって変化が求められ、多くの企業が激しい競争を勝ち抜くために新しい取り組みなどを行っています。
動向について理解ができた人は、自分のキャリアややりたいことにも目を向けてみましょう。
自分の言葉で話せるようにしておくことで、面接で説得力を増すことができます。
●”電力業界”の動向
動向(1):発電電力量の推移からみる電力業界
・新型コロナウイルスによる電力需要の増加と減少
動向(2):電力料金の変動
・電力小売り全面自由化
・発送電分離
動向(3):環境意識の高まり
・原子力発電問題
・脱炭素社会に向けた動き
●”電力業界”の求める人物像
・責任感がある人 ・コミュニケーション能力がある人
・チャレンジ精神がある人
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